全国高校野球群馬大会《決勝》前橋育英が5大会連続V 延長12回、健大高崎に6-1
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優勝を決め、大喜びで応援席に駆け寄る前橋育英ナイン=上毛新聞敷島
前橋育英―健大高崎 延長12回表育英無死二塁、岡田が勝ち越し2ランを放つ。捕手綱川、球審井汲=上毛新聞敷島
前橋育英―健大高崎 5回裏健大2死二塁、吉里が高村をかえす先制の中前打を放つ=上毛新聞敷島

 第103回全国高校野球選手権群馬大会は27日、前橋市の上毛新聞敷島球場で決勝を行い、前橋育英が延長十二回の末に6-1で健大高崎を下し、5大会連続6度目(昨年はコロナ禍で中止)の夏の甲子園出場を決めた。全国大会は8月9日に兵庫県西宮市の甲子園球場で開幕する。組み合わせ抽選会は同3日、オンライン形式で行われる。

 7年ぶりのノーシードから決勝進出を果たした前橋育英と、今春の選抜甲子園大会に出場した健大高崎の一戦は、前橋育英の外丸東真と健大高崎の今仲泰一の両エースによる緊迫した投手戦が繰り広げられた。1-1で迎えた延長十二回、前橋育英は無死二塁で岡田啓吾が右翼スタンドへの2点本塁打を放ち、勝ち越しに成功すると、この回に一挙5点を奪った。

 健大高崎は五回に吉里竜門の中前適時打で先制。八回にも1死一、三塁の好機をつくったが、併殺となり、得点につなげられなかった。

 両校が夏の群馬大会決勝で顔を合わせるのは2016~18年に続いて4度目。今回で前橋育英が4連勝となった。チケットは同球場の上限枚数となる2900枚が売り切れ、多くの人が2年ぶりの甲子園を懸けた熱戦を見守った。
(丸山朱理)

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▽決勝(上毛新聞敷島)

前橋育英000000010005─6
健大高崎000010000000─1
(延長十二回)

 ○…前橋育英が接戦を制した。1-1で迎えた延長十二回、無死二塁から岡田が右翼席への2ランを放ち勝ち越し。さらに外丸、横倉の適時打で計3点を奪い突き放した。先発外丸は4安打1失点で完投。

 健大高崎は五回、吉里の中前打で二走高村がかえり先制。以降も走者を出すも要所を抑えられた。

◎変化球打たれた
 健大高崎・綱川真之佑主将の話 守備のミスにつけこまれる形での失点が残念。リードでは変化球を打たれてしまった。

◎エース外丸、熱投166球
 延長十二回2死、打球が前橋育英の右翼、矢島頼我のグラブに収まると、ナインは両手を高く上げ、主戦外丸東真のもとへ走り寄った。3時間に及ぶ強豪同士の激闘は、磨き上げた守備力で粘り続けた前橋育英がまたしても制した。

 エース外丸の満身の166球だった。準決勝までに大会タイ記録となる9本塁打を放ってきた健大打線に許した安打はわずか4本。七回は先頭で15球も粘る3番小沢周平に対し、全て内角を突いた。「引いたらそこで負けると思った。結果を恐れず攻める」と最後はスライダーで空振り三振に。八回1死一、三塁の場面でも、投ゴロに打ち取り、併殺に仕留めた。強打者達に怯む気はさらさらなかった。1回戦から全6試合で先発し計42回1/3を投げてきたが「体も心も集中力は切れなかった」と振り返った。力投するエースに荒井直樹監督も「覚悟を決めた」と継投せずマウンドを託し、見事に応えた。

 無失策の守備も日々の練習の賜物だ。内野陣の決めごとは「球際、ゲッツー、ホームで刺す」の三つ。この日も普段通りに徹底して、健大打線の速い打球にも、簡単にヒットを打たせなかった。抜けそうな当たりを体を張って止めた三塁手の野村慶は「この1球で甲子園が決まると思って練習してきた」と胸を張る。磨いた堅守が十二回の攻撃に結び付いた。

 春季大会3回戦で太田に敗れ、2014年以来、7年ぶりのノーシードで挑む夏だった。選手自らが対話を増やし、本音でぶつかることで、チームを一から作り直してきた。荒井監督は「悔しい負け方をして、選手1人1人が自分に矢印を向けて積み重ねてきた」と明かす。皆川岳飛主将も「春の負けがなければ、この優勝はなかった」と実感を込めた。予期せぬ敗戦や自らの弱点にそれぞれが向き合い、耐え忍んだ時間が、夢の舞台へ導いた。
(丸山朱理)

◎岡田が勝ち越し2ラン
 「尊敬できる先輩を後押ししたかった」。何度もピンチを切り抜けた前橋育英の主戦外丸東真の粘投を見て、2年生スラッガー岡田啓吾が奮起した。延長十二回に勝ち越しの2ランを放ち、チームを逆転に導いた。

 緊張と弛緩(しかん)。絶妙な精神状態で試合に臨んだ。昨秋の関東大会県予選はけがで離脱したため、健大高崎とは初の対戦となった。鋭い直球を操る投手を目にして不安を感じつつ、「グラウンドに入ったらわくわくしてきた」。

 準決勝は4番を担ったが、この日は3番で後ろに主砲、皆川岳飛が控えている安心感もあった。四回と延長十回に二塁打を放ち、迎えた同十二回。「つなぐつもりでコンパクトさを意識した」という一振りは、想定以上に伸びてスタンドへ。「(これまでで)一番うれしかった」と、思わずガッツポーズした。

 同じ2年生の横倉拓実も八回、左前打で出塁して同点の本塁を踏んだ。チームを引っ張る3年生のプレーに、全身全霊で応じた後輩2人。ナインの結束はさらに強まり、夏の聖地で飛躍を期す。
(金子雄飛)

◎皆川が千金の同点打
 土壇場でいつも通りのスイングを取り戻した前橋育英の皆川岳飛主将が、値千金の同点打をたたき出した。試合前に「リラックスしていこう」とナインに声を掛けたが、その言葉は自分にも向けられていた。

 今大会屈指の強打者として、3回戦までは毎試合本塁打を放って周囲の期待に応えた。しかし、準々決勝、準決勝は7打数1安打と低迷。この日も2打席目までは、「アウトコースを振らされた」と振るわなかった。

 1点を追う八回、1死一、二塁で打席に立った。「調子の悪さを言い訳にしたくない。練習してきたことを出そう」と臨み、直前まで苦しんでいた外角の緩い球を、しっかりと引きつけて打ち返した。
 「キャプテンらしさを見せられて良かった」と皆川。活躍の舞台は甲子園へと移る。(金子雄飛)

◎健大高崎、先制及ばず
 試合終了後、上毛新聞敷島球場に降り注いだ通り雨は、ベンチで泣き崩れる健大高崎ナインの悔し涙を覆い隠した。春のセンバツに続く2季連続甲子園を目指した健大高崎の前に立ちはだかったのは、またも前橋育英だった。両校が決勝で顔を合わせるのは2016~18年に続く4度目で、健大の4連敗となった。

 青柳博文監督は「育英先発の外丸東真投手が良くて打てなかった。五回の先制点は1点にこだわる野球ができたが、八回の好機を逃したことが痛かった」と悔やんだ。

 準決勝まで大会記録の9本塁打を誇った強力打線は、外丸投手の前に四回まで沈黙。ただ今季の健大は強打、攻撃的走塁の「機動破壊」に加えて小技を絡めて1点にこだわる攻撃ができるのも特徴だ。

 五回1死から四球の高村尚杜をバントで送り2死二塁。6番吉里竜門はワンボールから真ん中に入る直球を中前に弾き返し先制点を奪った。吉里は「落ち着いて球を見て、つなぐ意識を持って打った」と振り返った。

 健大は強力打線を武器に昨秋の県大会と関東大会を制してセンバツに出場。今大会も終盤に本塁打を絡めてビッグイニングをつくり打ち勝ってきた。ただ決勝戦は延長十二回、健大の得意な形で育英に得点を許す形となった。

 チームをまとめてきた綱川真之佑主将は「育英はミスに付け込む集中力がすごかった」とライバルを評価。先制打を放った吉里は「(育英の)夏の県大会連覇を止めてほしい」と後輩に託した。
(新井正人)

◎今仲力投132球 10回1失点
 決戦前夜、健大高崎の昨夏の主戦だった下慎之介(ヤクルト)から連絡がきた。「お前が頑張れよ」。背番号1を継承した今仲泰一はその言葉に奮起、宿敵・前橋育英に10回を投げ1失点、132球の力投を見せた。

 140キロ代後半の速球を武器にがんがん攻める投球スタイルだが、この日は一転、緩い変化球を決め球に加え、凡打の山を築いた。

 圧巻は四回1死二塁、大会屈指のスラッガー、皆川岳飛に対し、「下さんから握り方を教わった球種。思いっきり腕を振った」と、伝授されたチェンジアップで内野ゴロに仕留めた。後続も同じチェンジアップで打ち取り窮地を切り抜け、捕手の綱川真之佑主将は「下さんの教えが生きた」と感謝した。

 その後は毎回得点圏に走者を背負う苦しい展開も、失点した八回以外は要所を締めて反撃を断った。

 延長十二回、継投した2人が相手打線に捕まり、5失点で敗戦。今仲は「先輩の雪辱を果たせなかった」と大粒の涙を流したが、「いつか下さんと同じ舞台に立つ」と次の目標を見定めた。
(山崎遼)

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《熱球解説 高橋幸男》勝敗分けたスイング 前橋育英―健大高崎戦
 大会5連覇を狙う前橋育英と、小沢周平君を筆頭に圧倒的な打力を誇る健大高崎との一戦は、非常にハイレベルな試合内容だった。

 試合前、「得点の多少」が一つのポイントになると考えた。守備からリズムをつくる前橋育英が勝つには、3失点以内に抑えることが必須。他方、健大高崎は4点以上奪えば勝機があると踏んでいた。両校とも、磨き上げた自分たちの野球を大舞台で十分に発揮できるかどうかが重要な争点になると察しをつけた。

 熱戦の火ぶたが切られ、まず目に留まったのは前橋育英の先発、外丸東真君の制球力だ。気後れせず打者の膝元に直球を投げ込み、強打の健大打線に芯に当てさせなかった。結果的に被安打4、長打はゼロと封じ込め、これまでにない「気迫」を感じた。準決勝の投球を見る限りは、菊池楽君への継投も荒井直樹監督の頭にあったはずだが、あそこまで(外丸君が)圧巻の投球をするとは。正直、驚きを隠せなかった。

 同じく健大の先発、今仲泰一君の力投にも目を見張った。140キロ台後半の速球と縦に落ちる変化球を織り交ぜ、凡打の山を築いた。バックも応えた。八回2死一、二塁では左前適時打を許すも、左翼手、高村尚杜君の好送球で一走を刺したのはファインプレーだ。あの回を最少失点で切り抜けたのは大きかった。

 つまるところ勝敗を分けたのは、「スイングの違い」にあったと考える。今大会9本塁打も放つ健大の各打者は、スイングの軌道がやや外回りしている印象を受けた。長打を狙うあまり、バットの頭が出ていなかった。

 育英はコンパクトなスイングに徹していた。井上陽太君、外丸君、岡田啓吾君の打球は見事だった。そのようなスイングがあったからこそ、それを手本にし、延長十二回の猛攻が生まれたのではないだろうか。「コンパクトなスイング」の重要性を改めて実感した。

 大会5連覇はまぐれではできない。普段の練習であらゆる状況を想定し、準備ができていたからだろう。偉業を達成した関係者に敬意を表したい。育英は本県代表として全国でも活躍し、甲子園で校歌を聞かせてほしい。
(元前橋工野球部監督)

 たかはし・ゆきお 1949年5月生まれ。渋川市出身。早大卒。東京六大学野球で外野手としてベストナインに2度選出された。73年から前橋工高などで監督を務め、甲子園に春夏5度導いた。

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