《白球の詩》全力 胸張れる終戦 嬬恋・勝俣勝主将
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試合終了後、まっすぐ前を見つめ伊勢崎工の校歌を聞く勝俣主将=上毛新聞敷島

 延長十回裏、嬬恋の最後の打者が三振。その瞬間、2回戦突破の夢はついえた。対戦相手の校歌が流れる間、まっすぐ前を見つめる。試合には敗れたが、表情は充実感に満ちていた。

◎補い合い 前を向く

 昨秋、新チームの主将はなかなか決まらなかった。2年生は4人。誰よりチームを思い、努力家の勝俣への期待は大きかった。嬬恋で生まれ育ち、野球の盛んな高校ではなく地元高校を選択、チームを強くするために右打ちから左打ちに変更した。勝俣なら主将を任せられる。みんながそう思っていた。

 しかし、本人はそうではなかった。金井昭洋監督は「理想とする『主将像』を持っていて、自分はかけ離れていると思っているようだった。でも『足りない部分は補い合えばいいじゃないか』とアドバイスした」と振り返る。

 「グループをまとめ、中心に立った経験はない。チームメートや後輩に怒鳴ったこともない。何をすればいいのか、まったく分からない」。悩んだ末、先輩や中学時代の友人に相談した。「胸を張ってやっていけばいい。そうすれば、ついてきてくれるはず。自信を持て」。そんな言葉が心に響き、ようやく決心した。

 「言葉で伝えることは得意じゃないから、行動で示す。自分にできることを、手を抜かずにしっかりやろう」。学校から約1キロ離れた練習場所の村総合グラウンドまで走って移動し、ボール拾いさえ率先してやった。そんな行動が次第にチームを変えていった。

 チームは、昨春から群馬県内の公式戦で3試合連続で渋川に敗れていた。先制したり、逆転しても耐えきれない。今大会1回戦も似たような展開だ。先制された後に逆転したが、再逆転を許した。以前ならここで終わってしまうのだが、その試合は違った。九回に追い付くと、延長十一回に3点を挙げ、ようやく渋川に勝つことができた。

 36度を超える酷暑の中で行われた15日の2回戦。初回は先頭打者としてヒットで出塁、後続が続き2点を先制した。しかし、二回以降、立ち直った相手投手を打ち崩せない。暑さで体調を崩す選手も出た。九回、ついに同点とされた。その裏。2死三塁で打順が回ってきた。「緊張より、最高の場面が巡ってきたことがうれしかった。結果はレフトフライだったが、力は出し切った。すごく楽しかった」

 野球に真面目に向き合い、全力でプレーしてきた。その行動でチームをまとめ、引っ張った。「全力を尽くしたんだ。胸を張れ」。試合後、チームメートに声を掛けた。主将の責任を果たした顔は、晴れ晴れとしていた。(小林聡)

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