《白球の詩》熱い気持ち 最後まで 高崎商大附・高杉魁主将
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劣勢を挽回しようとベンチで声を張り上げる高杉主将=上毛新聞敷島

 「負けちゃったんだ―」。高らかに校歌を歌う高崎商ナインの後ろ姿を見て、熱かった夏の終わりを感じた。主将として挑んだ最初で最後の夏舞台。「監督さん、コーチ、両親に勝って笑った姿を見せたかった」。振り返ると、整列まで必死にこらえていた涙があふれ出した。

◎責任胸に 仕事を率先

 新チーム発足後、渡辺賢監督から主将の指名を受けた。「野球に対する思いが一番熱く、誰よりも努力してきた」(渡辺監督)からこそ、チームを託された。しかし先頭に立ってまとめるのは容易ではなかった。練習の指示をうまく出せず、気の抜けた練習をするチームメートに強く言うことができなかった。

 「もともと口数の多い子じゃない」と父の直樹さん(39)。だからこそ行動で示してきた。「練習でも、雑用でもキャプテンがチームで一番やらなければ、だれもついてこない」。練習では一番にグラウンドに立ち、練習後も最後までバットを振り込む、みんなが嫌がるトイレ掃除も率先してやった。

 クラスメートでもある飯塚悠太は「普段はいつも笑顔で元気が取りえだが、野球になると真面目なやつだった」と話す。気の抜けた練習をした部員がペナルティーでグラウンドを走る際には、一緒に並んで走るなど、「チームの悪いところはキャプテンの責任」との思いが心にあった。

 「あまり弱いところは見せなかった」(渡辺監督)が、飯塚には弱音を吐くこともあった。「なんで俺ばっかり…」。それでも頑張れたのは、スタンドで過ごした昨夏の悔しさがあったから。

 2年生の春はメンバー入りしたが夏の群馬県大会前、投手で出場した練習試合で失点し「ふて腐れてしまった」。逆転を信じて最後まで戦う仲間に声援を送ることができず、メンバーから漏れた。「最初は受け入れられなかったが、同級生が活躍する姿を見て情けなかった」と振り返る。「こんなことをしている場合じゃない。来年は絶対にやってやる」。くすぶった悔しさが力になった。

 この日は新チームで、一度も勝てていない高崎商との2回戦。3番左翼で先発し、4度打席に立った。2点を追う六回の第3打席は中前打、八回は2死二塁から死球で塁に出たが、いずれも得点にはつながらなかった。四回と八回の守備では、自身の頭上を越えた2度の長打で5点を取られた。

 「後輩が見ていてくれたかは分からないけど、自分の思いがつながればいいなと思っていた」。劣勢でも決して諦めず、ベンチから声を出し続けた姿が、ここまで行動で示してきた主将らしさだった。

 「人一倍練習し、優しくみんなを引っ張ってくれた」と2年生エースの堀野嵐。口はうまくないが、誰よりも熱い主将の気持ちは、確かにチームメートに届いていた。(桜井俊大)

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