ザスパ 新体制へ 団結の力/信頼の笑顔/J2復活
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チームの方針などを掲げて記念撮影する(前列右から)布啓一郎氏、遠藤祐司氏、奈良知彦氏、飯田正吾氏ら
(左から)奈良知彦氏、遠藤祐司氏、飯田正吾氏

 サッカーJ3に降格するザスパクサツ群馬の運営会社、草津温泉フットボールクラブ(草津町)は27日、前橋市内で臨時株主総会と取締役会を開き、元前橋商業高サッカー部監督の奈良知彦氏(63)を社長に選任した。代表権のない会長に、石油関連事業などを手掛けるサンワ(前橋市)の会長、遠藤祐司氏(70)が就任する。J2復帰を目指す来季の新体制が固まった。

◎新社長の奈良氏「乾坤一擲の気迫」

 臨時株主総会では奈良氏を含む5人が新たに取締役に選任された。現在、育英短大で特任教授を務める奈良氏の社長就任は来年2月1日付。現社長の都丸晃氏(60)は同日付で退任となる。遠藤氏の就任は12月27日付。

 同日の記者会見で奈良氏は「団結の力」「信頼の笑顔」「J2復活」をチーム方針に掲げ、「人生最後の大勝負。乾坤一擲けんこんいってきの気迫を持って再生に全力で取り組みたい」と述べ、トップセールスや会員制交流サイト(SNS)を活用したファンとの交流にも意欲を示した。遠藤氏は「経済界のつながりを駆使したい。これまでは企画立案に手が回っていなかった。違う角度から手を入れたい」と話した。

 会見に合わせて来季のチーム体制も発表。監督に就任する布啓一郎氏(57)のほか、新設の強化本部長に、前J2熊本強化本部長の飯田正吾氏(50)、前橋育英高サッカー部監督の山田耕介氏(58)が「強化育成アドバイザー」に就任することが紹介された。

 このほかの新任取締役は上毛新聞社取締役東京支社長の二村正弘氏(61)、群馬育英学園理事長の中村義寛氏(56)、昭和食品社長の赤石貴正氏(50)、ソネット代表の樋口朋幸氏(48)。

◎強化本部長に飯田氏が就任

 フロントの新体制が発表された27日、ザスパクサツ群馬の来季のチームスタッフも明らかになった。強化本部長には飯田正吾氏が就き、コーチにはアカデミー組織を指導していた佐藤正美氏が昇格する。

 埴田健コーチとシュナイダー潤之介GKコーチは契約が更新され、現場は布啓一郎監督と合わせて4人が取り仕切ることになる。来季は30人弱の選手でスタートする見通しで、新社長に就任する奈良知彦氏は「十分この陣容で力はついてくると思う」と話した。

 飯田氏はJ1柏やJ2熊本で 編成に携わった経験を持ち、「J3は初めての カテゴリーになると思うが、勝負にこだわる補強をしたい」とした。

◎サポーター 経営陣へ期待熱く

 ザスパクサツ群馬の新体制が発表された27日、チームを支えてきたサポーターや企業、自治体から来季の捲土重来けんどちょうらいを期待する声が聞かれた。J3に舞台を移すチームの戦いぶりや、J2復帰にまい進すると宣言した経営陣の手腕が注目される。

 布啓一郎新監督について、ザスパのアカデミーに所属した経験がある長野原東中3年の山本尊さん(15)=長野原町=は「市立船橋を日本一にした手腕で輝かしい結果を出してくれるはず」と目を輝かせ、伊勢崎清明高2年の篠原千夏さん(17)=みどり市=は「選手がもっとメディアに取り上げられたり日本代表に選ばれることで、ファンを増やしてほしい」と育成力に期待した。

 熱心なファンの県サッカー協会理事、堀江聡さん(52)=藤岡市=は「子どもたちの目標となり、群馬のスポーツ界をリードする存在になってほしい」と祈り、オフィシャルメディカルパートナーの高山眼科(高崎市)の高山秀男院長は「1年でのJ2復帰を願い、応援を続ける。群馬のスポーツの象徴として盛り上げてほしい」と願った。

 「経営陣の刷新が勝利に結び付けば、応援に行きたいと思う」と話すのは、最近ザスパに興味を持つようになったという高崎高3年の飯塚高規さん(18)=渋川市。J3降格もフロント交代も知らなかったという女性(38)=高崎市=は「J1まで昇格して強豪になれば多くの県民が関心を抱くのでは」とした。

 ザスパの練習拠点となるクラブハウスを市内に整備した前橋市の山本龍市長は「情報公開を進め、課題を払拭ふっしょくし、新しい一歩を踏み出してほしい」、ザスパ運営会社の役員を務める黒岩信忠草津町長は「再構築したチームでJ2復帰を目指してほしい。町として可能な限り支援したい」とそれぞれコメント。正田醤油スタジアム群馬の使用料減免などで支援してきた県は「来季のクラブの運営方針を確認した上で今後の支援を考える」(スポーツ振興課)とした。

《ザスパ新体制会見から》課題明らかにしSNSで語り掛け

 新体制が固まったザスパクサツ群馬が27日開いた記者会見での、主なやりとりは次の通り。

―社長就任へ決意を聞かせてほしい。
 奈良知彦氏 J3陥落の非常に厳しい状況で、正直、引き受けるのを迷った。経営経験がなく心配だった。そうした中、遠藤さん(祐司会長)に「後ろ盾になるから頑張れ」と力強い言葉をいただき、やらなくてはと思った。

 友人が「乾坤一擲」という激励の言葉をくれた。文字通り私の人生最後の大勝負で、チームにとっても勝負の年となる。気迫を持ってチーム再生に全力を注ぐ。

―チームの方針は。
 奈良氏 まずは団結が大切だ。県民やサポーターとチームが同じ方向を向けば力を発揮できる。クラブの意思決定の過程や直面する課題を明らかにし、ツイッター、フェイスブック、記者会見を通じて語り掛けたい。団結があれば信頼が生まれ、スタジアムで懸命にプレーする選手を応援するサポーターの笑顔が広がる。

 J2復帰はクラブ役員の責任。1年でJ2に戻らなければならない。県民、サポーター、スポンサーが課題を共有し、全ての人たちの力を集結したい。

―輝かしい実績を持つ社長にとって、リスクを伴う挑戦となる。
 奈良氏 今季の最終戦でサッカーを愛する大勢のファンを見て、ザスパの火を消してはいけないと思った。私や教え子はサッカーによって成長させてもらった。もう一回、ザスパのため、群馬のサッカーのために働きたい。

―クラブ経営のためのビジョンは。
 奈良氏 安定した経営を維持するため、収入や支出を見直す。

―常勤役員と非常勤役員の違いは何か。
 遠藤祐司会長 常勤役員は社長と取締役1人の2人だが、非常勤役員が担当部署を持ち、もっとクラブに関わるアイデアを出していく。

―どんなサッカーを目指すのか。
 布啓一郎監督 攻守のバランスが大切。長いリーグ戦には必ず苦しい時期があり、バランスが欠けると波を取り戻すのが難しい。攻撃、守備の専門ではなく、全選手が攻守に関わり続け、基本に忠実にプレーすることを目指す。

―チームの印象は。
 布監督 真面目で真摯しんしなクラブだ。諦めない気持ち、粘り強さがある。選手のプレーの質を高め、潜在能力を引き出して勝つ確率を高めたい。

 飯田正吾強化本部長 個人の能力が高い印象がある。J3陥落から1、2年で復帰できないと泥沼にはまってしまう。結果にこだわり、強化を図りたい。

【解説】多彩な経験 改革期待

 新体制の発足でザスパのクラブ運営は大きな転換点を迎える。厳しい状況の経営には取締役がそれぞれ担当部門を持ち、現場に関わる頻度が増える。

 14人体制になる取締役は会社経営者が多い。業種は多岐にわたり、蓄積してきたノウハウはもちろん、得意分野を生かしたアイデアがてこ入れになるだろう。

 新社長の奈良知彦氏は元教員でクラブ経営の経験はないが人望は厚く、人脈も広い。地方クラブには欠かせないトップセールスにも意欲を見せており、当事者意識の高い「オールザスパ態勢」の構築が期待される。

 ゼネラルマネジャーを廃止したチーム運営は、柱の強化本部長にJ1柏やJ2熊本で経験を積んだ飯田正吾氏が起用され、指導歴33年の監督、布啓一郎氏とタッグを組む。教え子にJリーガーの多い山田耕介氏の協力を取りつけたこともプラスに働きそうだ。

 改革待ったなしのクラブに「ハネムーン期間」はない。新生ザスパの地域への浸透とともに、どれだけの支援を得られるかが今後の鍵を握る。ここからはスピード勝負だ。(椛沢基史)

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